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ジョン・T・ウィリアムズ『クマのプーさんの哲学』訳:小田島雄志、小田島則子

さらに言えば、この平和でしあわせな状態は政府機関によってつくられているのではない。ここには、国家もない、警察もない、法律もない、そして、罰則もない。あるのはただ、相手を破滅させたいと思う気持ちを抑えられるのは専制だけだと言ったホッブズに対する反論だけだ。 (p.86)

言ってることはめちゃくちゃかっこいいけど、
それ他のどんなほのぼの童話についても
全く同じことが言えませんか(笑)


ある哲学者(兼数学者)は言いました。
西洋哲学の伝統は、プラトンに付けられた注である、と。
今、私たちには次のようなことが言えます。
西洋哲学の伝統はプーに付けられた序文であった、と。

引用ではありませんが、
大体こんな文言から始まります。

「プー」とは、
あの間延びした声を発する頭の悪そうなクマのことであり、
わが国では「くまのプーさん」という名称で親しまれています。
はちみつにあらゆる生存目的をかけていそうなクマが、
これまでのどんな哲学者より
偉大な哲学者であったことを示そうというわけですが、
まあこれを本気で取る人はいないでしょう。

とりあえず、
ひとつプーの哲学というものに触れてみましょうか。
彼がはちみつを探す場面からです。

では、はちみつにかくされた深い意味は何なんだ? プーが本当にさがし求めていたものは何なんだ? そのこたえの一部をマタイ伝に見つけたからといってびっくりすることはない。この福音書には、洗礼者ヨハネの糧は「イチゴとはちみつ」だと書いてある。『ガリヴァー旅行記』の作者でもある司祭スウィフトは、はちみつを「最も高貴なる二つのもの、すなわち、甘美と光明」に結びつけている。(中略)ヨハネの例で見たようにはちみつを精神的探求の象徴としたり、そのほかの例に見たように探求に成功した人へのごほうびの象徴とするという伝統は、古代からえんえん受けつがれていることだ。 (p.16)

なるほど、そういえば旧約聖書の方にも、
乳と蜜の流れるべとべとした約束の地カナンとかありましたね。
ところで、「イチゴ」は「いなご」の間違いかも。
まあそうであったとしても、問題はない。

だから、この物語に出てくるはちみつの第一の意味は哲学的真実であると自信をもって言える。 (p.17)

ナ、ナンダッテー
と、こんなのがずっと続くわけですね。
古代ギリシアの哲学から始まっていて、
最初は面白おかしく読めていたんですけど、
そのうちこの強弁にも飽きてきまして(笑)

適当に読んでたんですけど、半分ぐらい読んで気づいたんですよ。
あ、これ入門書だ って。
章も時代やジャンルに沿って立てられていたんですね。
『クマのプーさん』が好きな人は
読んでみてもいいかもしれませんね。
途中分かりにくいこともあるでしょうから、
適当に流し読みでもしつつ、
雰囲気を楽しめばよいと思います。

私は別にプー愛好家でもなんでもありませんが、
意外と深い読み方ができるものですね。
実際に興味深い記述もたくさんあって、
そのうちのひとつを紹介してみましょう。


(クリストファー・ロビンは言いました)
「……ぼくがいちばんしたいことは、なにもしないことなんだ」
「なにもしないことをどうやってするの?」

ながいこと考えてからプーはききました。

「うんとね、出かけて行くときに、『クリストファー・ロビン、きみなにをしにいくんだい?』ってきかれるとするでしょ、そのときに『なんにも』ってこたえて、なにもしないことをしにいくことだよ」
「ああ、そうか」とプーは言いました。

「ぼくたちがいましているような、なにもしないこと、ってわけさ」
「ああ、そうか」プーはまた言いました。

「つまりね、出かけて行って、きこえない音をきいて、それで、くよくよ考えこんだりしないってことさ」
(p.220,221)

なかなか考えさせるフレーズですねえ。
この著者のウィリアムズという人は、
めちゃくちゃなことばっかり言ってるように見えますが、
きっとかなりのプーさん好きなのでしょう。
終盤を読んでいて、なんとなくそんな気がしました。

この本では
「一つのエピソードに複数の哲学を見出す」
というのが「大きな特徴」とされているわけですが、
不思議なものです。
多少強引なところはあるにしても、
よくこれだけの哲学的要素を引いて来れたものと思いました。

果してこれはミルンの『クマのプーさん』が優れているからか、
それとも、
哲学的記述がどんなものにでも対応できるほど発達しているからか、
どちらでしょう。

もしかすると、
哲学的記述が何でも語れるというなら、
そんなものは何も言っていないのと同じで、
大した役には立たないという、
かの偉大なクマによる哲学の集大成かもしれません(笑)
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以前に鳥取で大きな地震がありましたため、日本一危険な国宝とされるあれ、投入堂はしばらく見ることができないかと危ぶまれてましたが、実は今年の4月に開山されてたんですよね。危険ではありますが上がっていくと見晴らしはすばらしく、一見の価値はあるんではないかと思われますよ。私もちゃんとのぼったよ。

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