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川上未映子『ヘヴン』

川上未映子の『ヘヴン』を読んで
 私がこの本を読もうと思ったのは、「川上未映子」という作者の名前がなんとなくテレビなどで見た記憶があったからです。確かちょっと変わったタイトルをつけることで有名だったように思っていましたが、この本は普通のタイトルだから、人違いだったかなと自分の記憶に自信がなくなってしまいました。でも、作者の説明を見ると、デビュー小説が『わたくし率 イン 歯―、または世界』となっていて、「あ、やっぱりそうだった」と少し安心しました。
 いやしかし、なぜ安心する必要があったでしょうか。きっと私がミーハーだったからでしょう。人気のあるものはすきなのです。別にいいじゃないか。
 それにしても話のないようですが、明らかに幸せそうな感じがしてきません。話の主軸にあるのは「いじめ」であり、非常に胸糞の悪くなるようなストーリーです。ただ、この人の小説は何か普通と違うような気がしました。その違和感は「コジマ」の抱く主義主張に始まり、主人公といじめっ子との論争により爆発していきました。何だろう、これ、パースペクティブの話か。
 いじめられっ子というのは、色々と考えることがあるでしょう。子供の世界は狭いものです。学校を中心とした生活が自分のすべてになるものです。どこかに逃げようとかなかなか考えられません。だからひたすら自分がどうしていじめられるのかを考えて悶々としてしまうのでしょう。しかしそういう内向きな思考で解決できることはあまりないものです。主人公は自分がいじめられる原因を斜視であることに求めましたが、それは必ずしも正解ではなかったことがいじめっ子の口から表明されました。
 彼らの議論が中学生のそれとは思えなかった、とかいう野暮な印象はどうでもよいとして、実に客観的なものの見方をしているようでした。常識、正義、倫理、権利、世の中には色々な当たり前と考えられていることがあります。でもそれは、必ずしもすべての人にとってそうとは限りません。いじめっ子の論理は実に単純明快です。自分のやりたいことをやるだけ。倫理観とかそんなものに興味はありません。欲望が最大限重要視されます。欲望のまま行動をとることが許されるのは正真正銘の強者であると思います。現代の先進国を中心とする世の中というのは、弱者に対して実に優しい世の中であるといえます。法律は弱者を守るし、権利というたいした実体もないものを盾に、弱者にとって都合のいい現実を引き寄せることができます。人としての権利、学生としての権利、労働者としての権利、など。色々あるでしょうが、そういう価値観は結局人間が作り出したものに過ぎません。この世の真理として最初から用意されていたわけではなく、人間が発見した概念です。今こうして弱者が強者と戦うために使えるツールが、法律や権利といった概念の力であって、私たちは強者にいいように使われないために、ごみのように扱われないために、抵抗しているのです。そのような武器を守るために、私たちは自らの持つ権利や、自らを縛る規則に対してできる限りふさわしい行動を心がける必要がありましょう。私は弱者のための世界を支持したい。
 弱者が権利を主張し続けていられるのは、それに賛同する仲間が大勢いるからです。強者による一方的な支配を望む人間の数は高が知れています。そのような支配の中で利益を得られるのはごくわずかな数でしかないからです。しかしながら強者は強者ゆえに強大な力を持ちます。数をものともせず、力と陰謀によって支配を強めることは決して不可能なことでも、非現実的なことでもありません。ゆえに賢く頑強な弱者となって、私たちは私たちが快適に生きられる世の中を実現していかなければなりません。いやなことを拒絶し、すべて強者の思い通りに動いてはやらないということ、それが私たちの人間性を維持していくための戦いだと思います。
 ここまでやや抽象的に話を進めてきました。最後に少しだけ本書におけるいじめを考えます。先に「コジマ」ですが、彼女は少し無理をしすぎています。考えはずいぶん立派でしたが、そこまでする意義を感じません。自分たちが弱き存在としてあえていじめられることで、他の弱い者たちに対しても力を与えられる存在になるということが、どうしても必要なことと思われませんでした。これは個人の問題であって、他人のことなど気にする意味がありません。ここまで自己犠牲が強いと、まるで勇者か英雄のようでもありますが、自らそれになりたがるとは狂気だと思います。一人の人間がそこまで背負い込んで普通でいられるはずがありません。最後に狂って押しつぶされたのも無理ありません。
 主人公のほうは、ラストにずいぶん救われたような描写なので、良かったねですませたいのですが、正直先天的な差異は大きなハンデだと思いました。これはきつい。標的にしてくれといっているようなものです。周りがまともな人ばかりならば問題なくとも、ストーリーのように常軌を逸したクラスでは厳しくなりますね。私だったら問題にならない程度にこそこそ嫌がらせをするぐらいしかできないかなと思いました。



何とか2000字を超えました。
時節柄、
なんとなく本気の読書感想文に
近いスタイルをとってみました。
大変ですね。

それにしてもこの偶然は何なのか。
川上未映子と
永井均って対談してるのかよ!
後半の内容が
思いっきりニーチェの
パースペクティブだった。
私はこの二人の
つながりなんて全く知らなかったよ。
ほんとだよ。

しかしこの作者人気なんだよね?
「圧倒的な反響を得た著者の新境地」
とか紹介されてるんだけど、
子供のいじめとか、
こんな気分悪い話読んだ人間が
そんなにたくさんいるわけ?
普段の私なら
絶対手に取らない内容だったわ。
偶然ブックオフで
買い物することになって、
特にほしい本があったわけでもない、
何選べばいいんだろ、
あ、この作者聞き覚えある
うわ、いじめかよ
まあでも一冊ぐらい作者チェックしとくか
と、
ほとんど作者買いよ。

ただやっぱりうまいと思った。
面白いのは面白い。
気分は良くなれないけど。
今度会うときは、
もう少しうれぱみんが分泌される読み物で会おう。

さだまさし『解夏(げげ)』

全編感動が止まらない。
あふれ出んばかりの悲しみと、
それを乗り越える強さ
希望の物語に満ち満ちている。

全部が全部
幸せに終わるのではない。
そんな御伽噺のような
現実は存在していない。
人は生きていくうえで
様々な選択をし、
成功と失敗を繰り返しながら
自分の人生を
生きていかなければならない。

ただ一度の失敗が
その後何十年にもわたり
大きな問題として
もたげてきたとしても、
あきらめてはいけない。

生きている限り、
自分は選択をし続けることができるし、
人生を生きていける。
後悔のない生き方をすることは
難しいことなれども、
自分に嘘をついて、
臆病になったり、
ごまかしたりして
生きていくのは
最悪なことなのだ。

生まれた人は
必ずいつか死ぬ。
とてつもない悲しみだ。
死んだ人はもう戻ってこない。
もう会えない。

仏教では、
死というものを、
単なる形の変化としか
捉えはしない。
ある生き物が
死に絶えたとしても、
それは土に還り、
あるいは
別の生き物の
血肉になるだけであって、
地球の重さは
変わらないのだ。
諸行無常だから、
何ものも同じ姿を
保ち続けることはできない。

だが、
私たちの感情は
それをすんなり
受け入れられるほど、
冷静ではないのだ。
だから苦しいのだ。
宗教など
所詮そういう苦しみを
何とか紛らせるために
作られた詭弁にすぎないのだ。
だがその詭弁が
人々を慰めてもくれる。
考え方一つ変えるだけで
明るく生きることだって
できるようになる。

本書には割りと仏教的なもの、
禅宗的なものが顔を覗かせてきて、
通奏低音となっているようだった。

                     

「さだまさし」「幻冬舎」
という組み合わせによって、
当初ほとんど地雷扱いで、
買ってはみたものの、
危うく一生読まない本に
なるところであった。

上の組み合わせ、
というのは、
芸能人とこの出版社というのが、
いかにもなやり方であるからで、
幻冬舎自体
どうもやくざっぽいイメージがあって
あんまり好きじゃなかったり。

でも作家が
悪いわけじゃないから、
買った以上
ちゃんと読もうと思って、
読んでみたところ、
私としては
近年まれに見る
大当たりであったと
確信しております。
ちゃんと読んでよかった。

とてつもなく
失礼なことを言うけど、
芸能人に
まともなやつ(これはつまり私が考えるうえでの「まとも」ということであり、決して世間一般的な観点だとか…云々かんぬん……言い訳めんどくさい)はほとんどいないと思い込んでいるので、
衝撃的だった。
私の中での
「さだまさし」株は
うなぎのぼりだね。
おすすめとか聞かれたら
「さだまさし」って答えるから。

蓮実香佑(hasumi kosuke)『桃太郎はなぜ桃から生まれたのか』

表題の桃太郎だけでなく、
その他様々な、
我々が幼い頃から
なじんできた
物語・おとぎ話に関する考察。

筆者が親として得た、
子供の疑問から
物語を掘り進めていく
体裁を取っており、
読みやすく仕上がっている。

現代の私たちは
科学技術に囲まれた
生活をしており、
学校である程度、
自然のシステムを
教わっているので、
あまり迷信じみた話を
信じることは、
もはやあまりない。

しかしこの話が生まれた当時、
自然は今よりずっと
多くのわからないこと、
不思議なことであふれていた。

そんな中で生まれた物語としては、
大変よくできたものばかりだなあ、
と改めてしみじみ思った。

ちょうど
無垢な子供が
疑問に思うようなことに関して、
ひとまず納得させておくだけの
物語を用意しておきつつ、
たとえば桃太郎に見られるような、
単純に
桃から生まれたというだけでなく、
桃を食べた
おじいさんとおばあさんの間に
生まれたといったような、
裏ストーリーで
大人まで納得させようとするとは
なんとも手広い。

本書の説明では、
強引でないか? 
と思えるものも出てくるが、
しかしなお
説明しようとする気概を
評価するとともに、
最低限の論理性を残している
おとぎ話作者の構成力に
敬意を表さずにはおれない。

1話分が短く、
手軽に読めて、
面白かった。

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年が明けたと思ったらすでに春が来ていた。次の更新が夏にならないことをお祈り。

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