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『生きる』乙川優三郎

時代小説。
タイトルに惹かれた。

要するに、上司が死んで、
「追腹(おいばら)」をしなかった男の話。
追い腹というのは、
後を追って腹を切ること。


ちょうどこの上司が死んだ時に、
追い腹はやめろという
禁令が出たにもかかわらず、
周りの者は次から次へと追っていく。
男は城に仕える身だが、
周囲の視線が刺さるように降りかかる。


しかし男に降りかかるのは
それだけではなかった。


娘婿と息子が追い腹、
娘はショックで気が触れ、
妻は病死、家の使用人も次々去っていく。


不幸のオンパレードだが、
この本の面白いところは、
やはりタイトルにもあるように、
「生きる」ことを問うているところなのだ。


「生きる」とはどういうことなのか。
ここでは、男は死ぬことを
要求されているのである。
生きることを軽んじているわけではないが、
死ぬことの方が、
武士の本分としての
忠義を果たすことの方が
重要視されているのである。


だが、果たしてこれは
本当なのかと疑うべき面もある。
既にこの追い腹、
切腹というのが、
形骸化してしまっているのではないか。


武士の忠義を示すものとしてのこの
「儀式」が、必ずしもその本心を
映し出しているとは限らないものに
なっているのではないか。


ただ切らなければならぬことに
なっているから切るものもいるだろう。
命を張った一種のポーズである。
例えば男の息子はまさにこのパターンだ。
周囲の評判にいたたまれず切った。
正直かなりダサい。


彼はまだ少年だったから、
若気の至りと言うべきものですらある。
ただ、 それで命を失ってしまった。


私は別に追い腹、
切腹を否定するものではない。
馬鹿げているとは思うが、
したければすればよい。


だがどうもこの追い腹というのが、
ここでは単なる思考停止にしか
見えないのである。


誰も彼もあとの事を考えていない。
完全に全てを投げ出してしまっている。
ただただ面倒くさい。
生きていれば
どうせ悪いようにしかならないんだから、
死んじまえ、
そんな感じがする。
本当にばかげている。


男が周りから
非難の目や嫌がらせを受けるのにしても、
仮に男に武士としての資格が欠けていると
評価されたとしても、
その陰湿さに対しては、
相当の下衆っぷりが窺われ、
到底彼らに武士としての品格のようなものが
備わっているようには見られない。


後ろに見え隠れする
派閥争いのようなものにしてもそうだ。
人間よくぞここまで愚かになれると、
改めて感じさせられる。
そう思えたのは、
今も昔もそう変わらないせいか。


武士の忠義とやらと、
死を秤にかけ、
武士としてあることを重んじるのは、
それはそれで構わない。


しかし。
だったらそれなりの行動を心掛けるべきだろう。
何もかもが形だけのポーズで、
結局、そこから生まれる
利害にしか目を向けず、
己の都合のいいようになることをのみ
望むというなら、
それはクズ以外の何ものでもないだろう。


そして、そんなことにも気付かず、
くだらない思惑に乗せられ、
ただ他を非難するのみの
愚か者たちは、
塵芥に比すもはばかられる、
有害物であるに違いない、
そうではないか?


~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~

今回は少し過激な。
有害物だなんて言い過ぎだな。
これ「聞いて」るとだんだん鬱になってくるね。
もう不幸はいいよ、って(笑)

ところで今、「聞いて」と書いたけど、
今回は本を読んだのではなく、
「聞いた」のであります。

録音図書というもので、
これがなかなか便利。

ただ、
ディスクの入れ替えが面倒なのと、
ちょっとした短編しかないのが不満。

もっとこう『罪と罰』とか
『人生論』とか
『八十日間世界一周』とか
『千夜一夜物語』とか
とてつもなく長いのがあってもいいのに。
(あんまり詳しく調べたわけじゃないから私が知らないだけ? ほんとにあったらいいなあ。何か知ってる人は教えてくれてもいいのよ?)

内容の描写とかがやけにあやふやなのは、
本みたいにすぐ読み返せないせい(笑)

最近はこの録音図書で、
時代小説中心に選んでたんだけど、
何だか飽きてきて、

この
『生きる』
を最後にしばらく休もうと思ってたところ。

ほんとはもう
時代小説いいやって感じだったんだけど、
上にも書いた通り、
ついタイトルに惹かれて。

しかしこれは予想に反して面白かった。
まさかこんなものが
出てくるとは思わなかった。
でももう一回あの不幸の連続を
最初から聞きたいとも思わない(笑)

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