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『理由』・『我らが隣人の犯罪』宮部みゆき

『理由』

小説の感想を書くのは苦手だ。
何をどう書いたものか分からない。
ただ面白いのが、
この困惑を解説が裏付けてくれているところである。

どういう意味かと言えば、
かなり失礼な話だが
解説が失敗している。

解説者もまた有名な小説家で、
「おっ」と思ったものだが、
やはり何を書けばよいのやらと、
途方に暮れたらしく、
「ここでなにを語ればいいのか――と、半ばふてくされつつ」
「頭でっかちの無駄口」を叩いて、
見事に撃沈している(失礼!)。

正直、この解説はどう見ても蛇足で、
「ああ、この人でもこんなことになっちゃうのか」
などと、おかしく読んだ。

さて、解説をネタにするのも
これくらいにしておくべきだろう。
肝心の本の感想が
どこかへ吹き飛んでしまいそうだ。

端的にその感想を述べるとするなら、

疲れた
であり、

まあ面白かった
であり、

すごいなあ
といったものである。

600ページなので量に疲れるのはもちろん、
場面がころころ変わって登場人物が
ぞろぞろ出てくるので、
途中でよく分からなくなり、
イライラすることもあった。

そんなぐちゃぐちゃの糸を
ほぐして整理する作者はすごいのだが、
別にそれと面白さを
直結させようというのではない。

作者の分析が興味深かったのである。
面倒だからいちいち
取り上げはしないが、

事件に多くの人が関わることであったり、
証言に妄言が混ざることであったり、
はたまた、
リアルとヴァーチャルを分けるもの、
人の存在が現実になるために必要な要素だったり、

あーわかるわかるという感じがした。
とりたてて面白さを感じたのは、
そのあたり。

物語そのものは、
普通に面白いくらい。
読むのはちょっと大変。
普通の小説に比べると。
時間がある人にすすめる。

                         
『我らが隣人の犯罪』

宮部みゆき2連続。
面白い、面白い。
私は『理由』よりこっちの方が好き。
短編集で読みやすいし。

しかし短くてすぐ読めるから
好きなんていうわけでもない。
ちゃんと中身を評価している・・・
・・・はずだよ?

中でも気に入ったのは、
「この子誰の子」と
「サボテンの花」の2作品。

「この子」の方は最初、
20代の独身男が主人公かと思ったけど、
13歳とか言うから、
あら? と思ったね。
地の文に惑わされたのか。

「サボテンの花」はびっくり。
そうだったのか。
それにしても、この人の描く子供は賢い(笑)
大人びて見える。

短編集を読むと、
よく物足りなさを感じることがあるけど、
この本では全然感じなかった。
すっきりまとめて、やっぱりうまい。

感想はこれぐらい。

小説の感想を書くときに難しさを感じるのは、
それが言語化しにくいものを
多分に含んでいるからじゃないか。

面白い、すごい、上手い、
といったところまでは感じられたとしても、
なかなかそれらを展開できない。

具体的に何、
と言おうとすれば詰まるのである。

これが言葉の問題か、などと言い出すと、
哲学っぽいことになりそうだ。

最後に、愉快な箇所を引用して終わることにする。
「サボテンの花」より、冒頭のとこ。

「やめさせてください」
若い教師はぐいと肩を張り、両足をふんばって勧告した。こめかみがピクピクしている。
「ぜひとも、なんとしても、断固、あれをやめさせてください。さもなければやめさせてください」
権藤(ゴンドウ)教頭は、机の上の書類ばさみをなんとなくいじりながら、考えた。止めさせてください、と、辞めさせてください、か。そこで言った。
「宮崎先生、あなたは、今おっしゃった言葉を漢字で正確に書くことができますか」
沸き立つ怒りという熱湯に水をさされて、宮崎教師はまばたきをした。ビックリ水というやつだ。権藤教頭は思った。中華そばをゆでるときには途中でさし水することを忘れてはいけない。そのあともうひと煮立ちさせたら火を止めるのがコツだ。
だが、宮崎教師は中華そばではない。怒りはまたふつふつと沸き上がり、止まらなかった。吹きこぼれてきた。
(pp.112-113)

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Author:bq69pd
以前に鳥取で大きな地震がありましたため、日本一危険な国宝とされるあれ、投入堂はしばらく見ることができないかと危ぶまれてましたが、実は今年の4月に開山されてたんですよね。危険ではありますが上がっていくと見晴らしはすばらしく、一見の価値はあるんではないかと思われますよ。私もちゃんとのぼったよ。

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